一部のメディアが、「中国製ビールの95%に人体に有害な化学物質であるホルムアルデヒドが添加されている」と報道したことをめぐり大きな波紋を呼んだ問題で、新華社は中国政府の対応について「責任感が十分でなく、積極性に欠け、情報公開という概念がない」と批判する記事を他の中国紙からの転載という形で15日付で掲載した。
掲載された記事は中国青年報と法制日報からの転載で、いずれも15日午前付の新華網に掲載された。
これらは、過熱するマスコミ報道や掲示板の書き込みを前に、国家品質監督検験検疫総局(AQSIQ、質検総局)や業界団体が確固たる姿勢を示さないことに苛立ちをあらわしたものといえる。
実際、質検総局がビールの抽出検査を終え、「消費者は安心してビールを飲むことができる」と発表したのは、15日午後。新華社の報道に押し切られた格好だ。このあと、中国ビールメーカー各社も続々と「安全宣言」を発表した。
内容については、大胆な当局批判が目立つ。中国青年報からの転載記事では、先日、中国で問題となったケンタッキーやリプトンの事例を挙げて、「マスコミは騒ぎ、消費者は困惑しているのに、当局はいつも沈黙ばかり。今まで同じ轍を踏んできた」と辛口のコメント。
さらに、新華社は中国人民大学法学院の楊建順・教授の考え方を紹介。この中で楊教授は「政府の職員は積極性に欠け、情報公開という概念がない」「事件に対する認識が不十分で責任感が強くない」と怒りをあらわしている。
一方、法制日報からの転載記事は、まず「マスコミの過熱報道が中国ビール業界に悪影響を与えている」「発展途上国は先進国と事情が異なるのだから、発展途上国自身の規定に従えばそれで十分」とする対外経貿大学の学者の意見を紹介。
それと対比させる形で、北京大学法学院の孫東東・教授の「庶民は知る権利を持っているのだから、マスコミは堂々と報道すべき」「人命がかかっている問題であり、貿易という次元の話ではない」「マスコミが報道することで市民の関心は高まり、製品の品質向上につながるし、政府の監督強化を促すことにも役立つ」という見方を伝えている。
新華社の批判に後押しされる形で、中国の衛生当局と業界団体は重い腰を上げた。その点で、新華社はマスコミとしての役割を果たしたといえる。しかし、数年前まで中国ビールメーカーでホルムアルデヒドが添加されてきたことに関して、新華社の報道は不問に付している。さらに18日には、最初にビール有害物質問題を提起した情報源を探す「言いだしっぺ探し」の記事も掲載している。
消費者の声を代弁するための報道だったのか、それとも過熱する消費者の声を早期に静めるためだったのかは、今後の紙面が明らかにしてくれるだろう。(編集担当:菅原大輔)
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