MAO的コラム 中国語から考える 第3回−相原茂
感謝し、感謝されることに敏感な日本人。あいさつがわりに「この間はどうも」と口にする。ところで「この間はどうも」、中国語ではどう言うのだろうか。これに限らず、「お茶をどうぞ」など、日本語は単に「どうも」や「どうぞ」と言って、その後を言わずに済ますことが多い。
「お茶をどうぞ」なら

だし、「この間はどうも」は

となるだろう。直訳すれば「この間はありがとうございました」となる。
肝心なのは省略されている動詞で、上の例でも中国語では動詞“喝”と“ ”が必要になる。ほかにもたとえば、
(お先にどうぞ。)
これは“走”を補い、「お先に行ってください」ぐらいの意味だが、
(お先に味を見てください)
と考えることもできるし、あるいは
(お先にご覧下さい)
という場合もあるだろう。要するに日本語はそのセリフが使われる情況や場面によって伝えたいことが決定される。いわば情況決定型ということができる。
それに対して中国語は、はっきりことばに表すのだから言語決定型だ。まわりの空気や雰囲気で察してもらうというのではなく、はっきりとことばにする。誤解が生じないようにする。
日本語の「本日はどうも」などはお礼を言う時も使えるし、お葬式のときだって使える。便利このうえない。動詞の部分をいわないのだから融通無碍だ。外国人にとっては「万能の『どうも』」などといわれる。
中国語で、お葬式などで「本日はどうも(ご愁傷さまでした)」はどういうのか、きいてみた。

というそうで。“ ”は「悲しみをおさえてください」ということ、“ ”は「そして早く変化に慣れてください」ということだろう。
日本語では、動詞を省くという傾向はあらゆるところにみられる。我々は言わなくても想像できる時はいわないわけだから、たとえば劇場で空いている席を指して、
「ここいいですか?」
という。「ここ坐ってもいいですか」の意味だ。中国では、もちろん動詞が入る。

返事も日本語なら「はい、どうぞ」だが、中国語は動詞“ ”を省かない。

もうひとつ。たとえば先生とご一緒して食事に向う。日本語なら、
「先生、お好きなものは?」
と聞く。「お好きな料理、食べ物は何ですか」と聞いているに決まっている。まさか西洋18世紀のアンティークですなどとは答えない。情況をみて判断するわけだ。これが中国語ならことばとしてきちんと言う。
(先生、あなたは何を食べるのが好きですか)
中国語でいう時はきちんと、省略せず、くどいぐらいにいうのがコツだ。
メールのおしまいは、親しい間柄なら「では、また」とか「じゃあ」だ。いずれも動詞がない。中国語では動詞“ ”だ。“ ”ともいう。チャットなどでは88とも使う。(執筆者:相原茂)
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