【夕佳的上海消息】(その2)−加藤夕佳(上海サーチナ)
先日、昼休み中に何となく上海人民ラジオを聴いていたら、聴衆者から電話や携帯メールで意見を募る番組を放送していた。テーマは「中国のアニメについてどう思うか」だった。聴いているうちに「これは面白い」と、ラジオにクギ付けになった。
仕事ではたまに聴き取れないことがあって「え?」と聞き返すこともある私だが、ラジオに向かって聞き返すことができないこと(正確には、聞き返すことはできるけれど、二度と繰り返して貰えないこと)ぐらいは分かっている。だからありったけのヒアリング力を集中させて一生懸命耳を傾けた。すると、難度の高い専門用語が出てこなかったことでもあり、ほぼ100%近く聴き取ることができた(仕事もそれくらい集中しろ、というツッコミはなし!)。だから下にまとめた放送内容は安心して読んでいただける(筈だ)と思う。
その前に、まずは現在の上海における人気日本アニメを紹介しておこう。
「名探偵コナン」はその代表格だ。私の友人のなかには、日本語を習ったことがないにも関わらず、「真実はいつもひとつ!」のフレーズが口癖になっている者がいるくらいだ。そのほか「クレヨンしんちゃん」や宮崎駿監督の作品群、「ドラえもん」なども根強い人気がある。そういえば10年ほど前に、中国語学習の助けになればと思って「ドラえもん」の中国語版単行本を何冊か買ったことがあるが、なんと、これは今も新聞スタンドに並んでいる。さらにいえば、私は以前、携帯電話のメール着信メロディにドラえもんの「あんなこといいな〜」を使っていたことがあるが、このメロディが鳴ったときにたまたま近くにいた見ず知らずの中国人が鼻歌で合わせてきて大いに驚いたという経験もある。それほど知られているということだ。
また、これら超人気アニメのほかに見たことがある日本のアニメはあるかと周囲にヒアリングしたところ、「ドラゴンボール」「戦闘士星矢」「幽遊白書」などのタイトルが次々に挙がった。
えーっと、私はいったい何の話をしようとしているのでしょう。そうそう、ラジオ番組の内容でした。
放送では、コメンテーターとおぼしき人が「いまの中国では、品質の問題からか、人気は国産アニメよりも輸入アニメに集まっている。国産アニメ業界はこうした現状によって追いつめられているのだから、何とかしなければならないのではないか」と言っていた。そして市民からも中国のアニメ界の現状に対して、次のように厳しい意見が相次いだ。
(1)子供たちに見せられるようないいアニメがない。日本のアニメは面白いが、中国の文化を反映していないからあまり見せたくない(子を持つ母親の意見)。
(2)中国には独自の文化があるのに、どうしてそれがアニメにならないのか。例えば故事成語を題材にアニメを作ったらどうか(高齢の聴取者)。
(3)歴史を題材にしたアニメはどうか。私は歴史科をまもなく卒業するが、なんとかしてアニメ産業の役に立ちたいと考えている(女子大学生)。
(4)日本のアニメが中国に受け入れられているのは、日本の文化が中国から伝来したもので、根が一緒だからだ。だから日本のアニメは純粋な日本産ではなく、我々の文化を基礎にしたものだ(声からして、40代くらいの男性)。
最も多いのは(1)のような意見だった。上海の若い親たちはアニメを教育ツールに使う傾向があるが、子供の教育にいい良質な国産アニメがないことを悲観する声は圧倒的に強いのだ。(4)の意見は、いかにもありそうで現実にはありそうもない類いの意見だが、実際に聴いたナマの声だ(ほとんど「中華原理主義」だが、このような考えの持ち主が少数派であることを願いたい)。
これらの意見に接したコメンテーターたちの反応は概ね「やはり」というものだったが、彼らによれば、中国の国産アニメに立ちはだかっている壁は、何よりも資金だという。資金が圧倒的に不足しているために関連技術が追いつかず、日本やアメリカのアニメに頼っているとのこと(コメンテーターたちはしきりに「没銭、没銭(メイチエン=お金がない)」を繰り返していた)。
なお、ラジオでは触れていなかったが、現在中国では、2004年4月20日に国家広電総局が公布した《我が国における映画アニメーション産業に関する若干の意見》に基づいて、国産アニメと輸入アニメの放送比率は6:4(国産は6を下回ってはならない)という規制が行われている。こういう措置を採らなければ国産アニメを保護・育成することができないというわけだ。だから中国のアニメ産業は、まだ揺籃期でしかないといってもいいだろう。
私には、残念ながら中国国産アニメを支援できるほどの資金はないが、心情的には中国の国産アニメの発展を願っている。(2)や(3)の意見にもあったように中国には悠久の歴史、文化があるのだから、かの「孫悟空」に匹敵するようなスペクタクル・アニメが生まれる余地は十分ある筈だとも思う。ラジオ番組にさえ簡単にクギ付けになる私だ。面白い中華アニメが出現すれば、いつでもクギ付けにされる用意はある。(執筆者:加藤夕佳) |