続・いくつわかりますか? 外来語事情(9)
日本語と中国語(59)−上野惠司(日本中国語検定協会理事長)
前回に引き続き「頭の体操」である。次の外来語の意味を考えていただきたい。
(1)銀幕(2)超人(3)黒馬(4)黄牌(5)環島
(6)快餐(7)熱線(8)黄金週(9)白宮(10)牛津
今回はすべて意訳語である。
(1)スクリーン。映画を映す白い幕を表す英silver screenから。「搬上銀幕」(映画化する)のように使う。今はあまり目にしなくなったが、日本でもよく使われた。「銀幕の女王」、「銀幕の恋人」。
(2)スーパーマン。もともとはニーチェ哲学の中心概念であるドイツ語の
の訳語であるが、今は英supermanの訳語として「人並みはずれた能力のある人」の意味に使われている。なお、スーパーは通常は「超級」と訳され、「超級電脳」(スーパーコンピューター)、「超級市場」(スーパーマーケット)のように使われる。
(3)ダークホース。英dark horseから。競馬で「実力不明の馬」を指すが、転じて「(正体はよくわからないが)有力と思われる競争相手」の意味に使われる。なお中国語では、「黒」は多く「不法の、闇の、秘密の」の意味で使われる。「黒車」(白タク)、「黒店」(無許可の店)、「黒孩子」(出生届を出していない子供)、「黒社会」(マフィア、暴力団)……。コンピューター用語のハッカーは「黒客」と音訳されるが、巧みに「不法侵入者」の意味もかけられている。
(4)スポーツ競技のイエローカード。転じて、広く「警告」の意味に使われる。「警告を発する」は「亮黄牌」。「亮」は「出して見せる、パッと示す」。なお「レッドカード」は「紅牌」。
(5)ロータリー。英rotaryの訳語。道路交通に関するものには、他に米safety islandの「安全島」、英zebra crossingの「斑馬線」(横断歩道)などがある。
(6)ファストフード。「漢堡包」(ハンバーガー)が人気である。「漢堡王」(バーガーキング)は米チェーン店名。
(7)ホットライン。「非常用直通電話」の意味で使うほか、「旅遊熱線」(人気のある観光コース)のようにも使われる。「熱点」は「人気スポット」。コンピューター用語のホットキー」は「熱鍵」。
(8)ゴールデンウィーク。長期の休みは、もとは春節の期間だけであったが、今は5月1日の「労動節」(メーデー)に始まる1週間、10月1日の「国慶節」に始まる1週間が休みである。他は元旦の1日くらいで、日本のように学校や職場が休みになる祝祭日は多くない。
(9)ホワイトハウス。ワシントンにあるアメリカ大統領の官邸。転じて、アメリカ合衆国政府をも指すのは、日本語と同様である。原義が「五角形」のペンタゴン(アメリカ国防総省)は「五角大楼」。
(10)オックスフォード。ox牛+ford津である。ケンブリッジは「剣橋」。こちらは音訳+意訳である。(執筆者:上野惠司)
| 【執筆者】 | ||
![]() | 上野 惠司(うえの けいじ)
1939年(昭和14年)生まれ。東京教育大学文学部卒業、大阪市立大学大学院修了、文学博士。長年にわたってNHKラジオ中国語講座を担当した。筑波大学教授を経て、現在共立女子大学教授、日本中国語検定協会理事長。 ●著作(一部) | |
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