日本たばこ産業(2914)株の意外な上昇要因=北浜流一郎

  このところことあるごとに使っていることばを今日も繰り返したい。東京市場に春到来。これです。日経平均株価は突破が困難と見られた8500円台に乗り、絶好ともいえるほどの好環境になってきました。それに取り残されている銘柄も多いものの、知名度高く、経営不安などない大手企業株はことごとくといってよいほど上向きはじめています。

  これまでなぜこんなにも売られ続けるのか。こんな疑問があった日本たばこ産業=JT <2914>株でさえ重い腰を上げはじめました。この株はJTの子会社JTフーズ社が関わった、いわゆる「毒入りギョーザ事件」。それが表面化する直前の07年12月に70万8000円の高値をつけたあと下落に転じ、今年の3月19日21万6000円の安値をつけるところでま下げ続けました。

  途中昨年夏には41万円前後から52万円前後までも戻る局面もありましたが、長続きせず、下落トレンドになかなか歯止めがかからぬまま今日まで来てしまっていました。食品安全問題だけでなく、喫煙に対する内外での嫌煙意識の高まり、たばこの自動販売機に成人識別ICカード「taspo (タスポ)」が導入されるなど、収益減要因が多過ぎるとの市場判断からと見てよいでしょう。

  ところがここに来て株価は次第に水準を高めています。13週移動平均線はなお下降を続けているのですが、25日移動平均線はすでに上向きの兆しを見せはじめているのです。このような現象が生じるためにはまず株価の浮上がなければなりませんが、それはすでに起きています。3月16日21万6000円の安値をつけた株価は、すでに26万6000円台にあります。

  本格反騰に転じたのか。こう期待したいところですが、ちょっと待った、です。上昇要因を調べてみる必要がありますが、意外なそれがあります。3月16日の「会社四季報」発売です。そんなことで株価が動くのか、との反論があるでしょうが、同誌のコメント欄が好ましいものだった場合、株価に大きく影響します。
  
  どんな内容だったかは、版権の問題があるためここでそのままを紹介出来ませんが、海外での販売が想定以上に好調である、食品部門の赤字も縮小する、医薬品部門も浮上が見込める・・・との内容でした。

  なお3月16日には「会社四季報」のラライバル誌である「会社情報」も発売されています。同誌の記述はどうだったか。これまた版権の問題がありますので、詳細は紹介できませんが、ひとことでいうと、JT株には厳しい内容でした。

  「会社四季報」の記述にしても、決して驚くほどの好内容ではありません。しかしいまはファースト・リテイリング <9983>のような例外を除き、ほとんどの企業が大苦戦に陥っている現実を考える必要があります。それを考慮すれば、JTが意外に健闘していることが分かります。現在の株価は株式市場がそれを正当評価している証拠であり、東京市場が冷静さを取り戻しつつある。こういえる状況です。

  ただ率直なところ株価は目先この株にしては上昇ピッチが早過ぎます。この点には軽い警戒が求められ、オーソドックスな対処法としては、一服するのを待つ。たばこ株であるだけに、いまはそれが必要といえます。(執筆者:北浜流一郎 株式アドバイザー)

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