代金回収の事例
ジェトロが行った日本企業の中国国内販売活動に関する調査によれば、中国国内販売における問題の中で最も多い問題が売掛金の回収で、75.3%にのぼる。この対策として日系現地法人はさまざまな方法を講じているが、ここではジェトロで取り上げられた事例と筆者の聞き取り調査をもとに日系現地法人が行っている代金回収の対策について紹介することとする。
ある電機メーカーは代理店を活用して国内販売を行っているが、魅力ある商品を提供できないと優先的に代金を支払ってくれず、代金回収に苦労した経験から、現在では委託販売を一切行わず前金か現金が中心で、信頼できる少数の代理店に対してだけ1−2ヵ月の手形で代理店に販売しているとのことである。
またある家電メーカーは、代金回収に慎重を期し、振込みを確認するまで商品を出荷していない。現金商売ができないような商品には価値がないとの基本姿勢を貫き、ユーザーに対する提案営業等により指名買いを起こさせるプル戦略が支払面でも優良な顧客基盤をつくり上げているという。
さらにある衣料品メーカーは、最終的に回収率を上げるには魅力ある商品を継続的に市場に供給することに尽きるという。売れない商品の代金を督促しても回収は難しい。一方では営業担当者と代理店との日頃のコミュニ−ケーションを活発に行って信頼関係を構築することも代金回収を図る上で重要であるという。
ある冷凍食品メーカーは、過去の代金回収で苦労した経験から日系企業を中心に販売し、中国企業との取引では引渡し時における現金取引を行っている。ただ最近では中国企業との取引が増えてきたことから、一部の企業とは1ヵ月サイクルで商品を渡し、翌日には現金を全額持参させるなどの条件で取引を行っている。代金回収問題に対しては、中国企業が追加注文を行いたくなるような商品を開発することが効力のある対応策であるとしている。
この他には、ある食料品メーカーでは売掛金回収は経営戦略上の重要課題としてとらえ、売掛金回収に際し、その回収率に応じて担当者の給料を調整しているところもみられる。売上金の未回収問題が発生した場合は、裁判や強制執行等の法的手段に訴えている。回収学が結果的に少額にとどまることも少なくないが、このような強行姿勢をみせることが大切だという。
代金回収の方策
以上、中国展開企業事例から代金回収の実態を述べた。ここで取り上げた代金回収方法は比較的規模の大きい企業の事例であるが、このような代金回収方法は規模の大小を問わず適用されるものであることから、地域中小企業の中国現地法人が中国国内で代金回収する際の参考とすることができる。上記事例からみた代金回収対策は以下のようにまとめることができる。 1.現金・前金による取引 2.代理店による代金回収のリスク負担 3.営業マンに対する代金回収を含めた営業活動の強化 4.魅力のある商品の開発と市場への供給 5.代金回収のための社内体制の整備
(執筆者:鷲尾紀吉 東北財経大学MBA学院客座教授。専門分野は、国際市場戦略論、国際流通論、中国投資論 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
【関連記事・情報】 ・日本の中小企業と中国4:現地調達と品質管理(2009/09/14) ・日本の中小企業と中国3:人のマネジメント(2009/09/07) ・日本の中小企業と中国2:現地パートナーの確保と対応(2009/08/31) ・日本の中小企業と中国1:活発化する中国展開と多様な中国(2009/08/24) ・中国を核とする東アジア+中央アジア経済圏の形成へ(2007/05/02) |