フランス社会の敵、ジャック・メスリーヌの伝記映画レビュー

拡大写真

  フランスの“パブリック・エネミー(社会の敵)・ナンバー1”、ジャック・メスリーヌの半生を描いた二部作トータル246分の濃厚伝記映画のレビューをお届けする。

  Part1『ノワール編』は、アルジェリカ戦争に参加したジャック・メスリーヌが初めて人を殺めるシーンで幕を開ける。故郷に戻った彼は、ギャングの仲間入りを果たし強盗を重ねる。旅先のスペインで恋に落ちた女と結婚し娘が誕生、堅気に戻ろうとするが、度台無理な話だった。愛想を尽かした嫁が彼の元を去るが、意気投合した女と組んで犯罪を繰り返し、逮捕寸前でカナダに高飛び。そこでも強盗を繰り返し、遂に逮捕され収監されるが、大胆な手段で脱獄を成功させる。

  Part2『ルージュ編』は、フランスに舞い戻り銀行強盗を繰り返すが、隠れ家を警察に急襲されお縄を頂戴される。が、フランス一の厳戒態勢が敷かれている刑務所に収監されるも、脱獄に成功。運命の女性シルヴィアと出会ったジャックは、彼女と共にロンドンに潜伏。億万長者を誘拐し豪遊を満喫しながらも、自分の死期を悟った彼は遺言のテープを製作。数ヵ月後、パリで警官隊に銃殺される最期までを描く。

  ジャックが自分の資質を見出し、犯罪王への道を突き進み始める前編は、家族(両親と妻子)やギャング仲間たちとの絆や、最強パートナーとなる女性との出会いなどドラマを描きつつも、カタルシスを生む命がけの脱走劇や銃撃戦がハイライトとなっており、アクション色が濃く娯楽性が高い。一方、後編は、もう一人の天才脱獄王と共に宣言通りまさかの脱獄をやってのける派手なシーンはあるものの、自分が銃殺されることを予言(覚悟)しながら、その日の到来まで自分のスタイルを貫きつつ、反体制的なアナーキストとして生き急ぐ男の余命カウントダウンを描いたサスペンスフルな作品に仕上がっている。

  それぞれ一本の映画として独立&完結しているし、作風も異なるので、人によって好みに差が出るだろうが、一方を観たらもう片方を観ないわけにはいかないはずだ(勿論、前編から観るのが望ましい)。銀行強盗と脱獄を繰り返した、カリスマ性と不思議な魅力を持ち合わせた犯罪王の華々しく壮絶な人生を2時間の映画で収めるのは不可能な話なので、二部作で徹底的にエピソード満載に描ききったのは正解と言えよう。

  豪胆かつスマート、しかもウィットに富んだ変装の名人であるメスリーヌを演じるヴァンサン・カッセルの大胆にして繊細な演技とカメレオン俳優ぶり(なんと20キロ増量!)も天晴れだが、脇を固めるキャストたちも豪華極まりない。特にPart1で非道なギャングの親分を演じたジェラール・ドパルデューの貫録と、Part2で華麗な脱獄王を演じたマチュー・アマルリック(『007/慰めの報酬』『潜水服は蝶の夢を見る』)の軽妙な存在感。ヒロインではやはり、いつも以上にゴージャスなリュディヴィーヌ・サヴィエの魅力が光る。監督・脚本は、『アサルト13要塞警察』のジャン=フランソワ・リシェ。(小林真里)(情報提供:Hottrash.com)

【関連記事・情報】
本当のパブリックエネミー<社会の敵>は誰だ!?!
『2012』レビュー(2009/11/16)
地震、噴火、津波……世界の終末を描いた『2012』(2009/11/16)
スリラー映画を観て! 第一弾『Devil』の全貌がついに(2009/11/16)
巨大エイリアンと恋に落ちる!? 『ウォーリー』監督最新作(2009/11/16)