存続の危機にある「NPOバンク」〜改正貸金業法の影響

  「NPOバンク」をご存じだろうか。

  NPOバンクとは、市民が自発的に出資した資金により、地域社会や福祉、環境保全のための活動を行うNPOや個人などに融資することを目的に設立された、「市民の非営利バンク」のことである(NPOバンク連絡会事務局長・多賀俊二氏による)。

  公的介護保険サービス事業や、政府・自治体からの委託事業を担うNPOが増えるに従い、運転資金や設備資金を借りるNPOが近年増えてきている。ところが、物的担保をもたないNPOに対して、銀行はあまりお金を貸そうとしない。労働金庫や一部の信用金庫などは社会貢献の一環として、NPOへの融資制度を作っている。他方、一般市民もNPOの資金調達を支援したいと、NPOバンクを各地で設立しており、NPOバンクは現在、全国で12団体が活動している(全国NPOバンク連絡会調べ)。

  もっとも、「NPOバンク」といっても、法律上は銀行ではなく、貸金業者という扱いである。市民が非営利で金融事業を行おうとしても、それにふさわしい事業形態がないため、消費者金融と同様の事業形態をとらざるを得ないのである。

  NPOバンクは、規模は極めて小さいものの、高齢者介護や障害者福祉、環境事業、まちおこし事業、女性のワーカーズコレクティブなど幅広い事業に融資し、こつこつと実績を積み重ねてきた。

  現在、NPOバンクをとりまく最大の問題は、貸金業法改正(2006年)の影響である。貸金業法改正の目的は多重債務者問題を解決し、消費者を保護することにあった。そのため、消費者がいくら借りているのかという「信用情報」を貸金業者が共有することや、消費者の年収の3分の1までしか貸付できないなど、過剰貸付を防ぐ仕組みを取り入れた。

  多重債務者問題の解決という目的はともかく、NPOバンクも他の消費者金融と同様に改正貸金業法によって規制されると、さまざまな弊害が起きてくる。とりわけ、貸金業者は指定信用情報機関への加入と信用情報の共有を義務づけられる。消費者が貸金業者から融資を受けていれば、「この消費者は資金繰りに困っている」と銀行は判断し、その消費者への融資を断るらしい。「高リスクの消費者が消費者金融を利用している」と一般的に考えられているためだ。NPOバンクの利用者も、信用情報が貸金業者や銀行に共有されることで、銀行との取引ができなくなる恐れがあるのだ。

  加えて、指定信用情報機関への加入費用や事務負担も大きく、ボランティア中心で運営しているNPOバンクにはとても負担できない。

  そのため、改正貸金業法の完全施行(2010年6月)を控えて、NPOバンク関係者は貸金業法の適用除外を求めて金融庁や各政党に訴え続けてきた。

  筆者も全国NPOバンク連絡会の事務局の一人として、NPOバンクと法規制の問題を間近で見てきたが、グラミン銀行のノーベル平和賞受賞や、昨年の政権交代などもあって、大きな時代のうねりが起きていることを実感している。10年前は、NPOバンクという言葉もまだ使われていなかったし(NPOバンクの先駆事例は存在していたが)、もちろんその全国組織もなく、一般市民の関心もあまり強くなかった。今ではNPOバンクや市民金融、ソーシャルファイナンスといった概念も少しずつではあるが世間に知られてきて、有難いことに、NPOバンクに理解のある政党が出てきたし、新聞やテレビなどでもちょくちょく取り上げられるようになった。

  時代の変化を体で感じつつ、今後の行方を注意深く見守っていきたい。(執筆者:小関隆志 明治大学経営学部准教授  編集担当:サーチナ・メディア事業部)

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