香港政府バブル抑止に本腰〜住宅販売ガイドラインを発表=香港ポスト

mixiチェック このエントリーをはてなブックマークに追加
拡大写真

  特区政府は先ごろ、民間住宅の販売手法を見直す「九招十二式(9措置12規則)」と呼ばれるガイドラインを打ち出した。昨年から続く活況で、不動産相場は過去最高であった1997年の水準まで上がると予想され、資産バブル拡大が懸念されている。政府はこれまで価格高騰は高級物件に限ったものとの見方を示していたが、中堅物件や賃貸相場も上昇しており、市民生活が圧迫されるのを憂慮して、抑止策に本腰を入れ始めた。
     
中古価格は過去12年最高

  4月21日、曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官と運輸及房屋局の鄭汝樺(エバ・チェン)局長はそれぞれ、住宅販売のガイドラインを発表した。新築物件の販売開始より24時間前としていた「説明書の配布」を7日前、「価格の提示」を3日前に早め、当初販売の戸数を増やすなど、購買意欲をあおる従来の手法を是正する9措置と、天井を設けなかったり小さめの家具を置くなどして実際より広く錯覚しやすいモデルルームの見せ方を改める12規則から成る。

  このガイドラインが発表された最初の週末に当たる24・25日、住宅物件の取引は新築・中古ともに急減した。不動産代理店、美連物業(ミッドランド・リアルティー)によれば、両日の10大大型団地の成約数は31戸で、前週末の50戸から38%減。この時期に売り出されたMTR大囲駅上のマンション「名城(Festival City)」をはじめ新築物件の成約数は27戸で、前週末の70戸からは61%減となった(26日付『香港経済日報』)。

  不動産市場では昨年から取引が活発化。土地註冊処が発表した3月の不動産取引の登録件数は計1万2706件、前月比5.3%減、前年同月比では57.6%増加した。取引高の合計は581億ドル、前月比19.3%増、前年同月比では103.1%増だった。登録件数は11カ月連続で1万件以上を維持している。不動産取引の活況が10カ月以上続くのはまれで、前回は07年4月−08年6月の15カ月間連続で1万件以上を維持した。

  中古住宅の価格相場を示す中原城市領先指数(CCL)は4月18日締めの1週間で前週比1.16%上昇の79.39ポイントとなり、過去1カ月で最も高い上昇幅となった。CCLでは過去最高となった1997年6月の103.52ポイントと98年1月の80.71ポイントに次いで過去12年で最も高い指数を記録した(24日付『明報』『文匯報』)。

  住宅価格の上昇に伴い家賃相場も上昇している。美連物業の統計では、3月の住宅物件の平均賃貸料(1平方フィート当たり)は約18.2ドルで、前月比1.5%、昨年第4四半期に比べ5.1%上昇した。大型団地50カ所のうち第1四半期に賃貸料が5%以上上昇したのは20カ所に上っている(12日付『明報』『文匯報』)。中原地産(センタライン・プロパティーズ)の統計では、平均賃貸料は昨年4月から今年2月までの累計で27.3%上昇した。2月にはすでに08年9月のレベルを回復している(3月23日付『明報』『香港経済日報』)。

住宅コストが生活圧迫 世論調査の支持率最低に

  労働者団体、香港工会連合会が4月に行った調査によると、8割の市民が現在の住宅価格は市民の負担できるレベルを超えているとみなしている。毎月の家賃または住宅ローンの支払いが世帯収入の40%以上を占める家庭が約20%を占めた。住宅コストが進学、結婚、子女の教育、老後の人生設計の妨げになっているとの答えは73%に上り、高い不動産相場に多くの香港市民が悲鳴を上げている。

  2月下旬に発表された財政予算案でも、多くの市民が不動産価格の安定措置を求めていた。香港研究協会が1月に行った世論調査によると、現在の不動産価格については78%が「高すぎる」とみており、65%が財政予算案で不動産に対する措置を打ち出すべきと答えていた(1月29日付『文匯報』)。予算案では高級物件の取引にかかわる印紙税の税率引き上げなどが盛り込まれたが、対策が不十分との声も多かった。

  予算案のほかにも香港金融管理局(HKMA)による住宅ローンの制限などが打ち出されていたが、これまで顕著な効果は見られていなかった。特区政府には97年に打ち出した「年間8万5千戸の住宅を供給する」政策などによって不動産相場が暴落し、さまざまな弊害を招いた苦い経験もあり、不動産抑制策には慎重にならざるを得ない。

  現在、香港経済は回復基調にあるものの、市民の経済的な不満は一向に解消されていない。統計処が発表した3月の消費者物価指数(CPI)伸び率は2%で、インフレはじりじりと市民生活を圧迫している。香港大学民意研究計画が4月に行った世論調査では、曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官の支持率は34%で、今年に入ってから最低となった。さらに不支持率では49%で、05年の就任以来で最高に達した。

  5月16日には立法会議員5人の辞職に伴う補欠選挙が行われる。補選では民主派が庶民の不満に訴えて投票率を引き上げ「住民投票」としてアピールするつもりであるため、政府が不動産抑制策に本腰を入れ始めたのは補選を意識したものともいえる。補選の後も6月4日の天安門事件追悼集会、7月1日の民主派によるデモと政治の季節が続く。社会不安を防ぐに当たっては不動産政策も大きな鍵を握っている。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:水野陽子)

【関連記事・情報】
香港・広東省の協定、第12次5カ年計画入りで国家政策へ格上げ=香港ポスト(2010/04/23)
映画受賞で永利街の古い建物保存の気運、再開発の道に分岐点=香港ポスト(2010/03/30)
全人代と香港・マカオ:珠江デルタとの連携強調=香港ポスト(2010/03/23)
香港2010/11年度予算案:格差是正が長期的課題=香港ポスト(2010/03/09)
天安門事件の再評価求めて20年、支連会主席がん公表=香港ポスト(2010/03/02)

注目の企画