<金マーケット>スタンダードバンク金相場予想《後編》

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ゴールドディーリングのすべて2−池水雄一

 今週も先週に引き続いて、私が属するスタンダードバンクのアナリストの今後の金相場予想をお届けしましょう。これ私自身の考えにほぼ一致します。

宝飾需要

  これから2年以上の長期的視野にたつのであれば、宝飾需要の落ち込みは深刻な問題ではありますが、今現在のマーケットではやはり「投資需要」が金相場の大きな鍵をににぎっています。歴史的には金需要においては、宝飾需要のほうがより安定した大きな需要がありました。現在の宝飾需要の減少は、長期的な価格サポート要因を弱くさせる恐れがあります。もし実質金利が上がるようなことがあればその恐れは一段と強くなります。

  2000年には宝飾需要は3205トンと金の総需要の80%を占めていました。2008年には宝飾上は2193トンにまで減り、これは総需要の63%に過ぎません。2009年には宝飾需要はさらに減少し、1759トンと総需要の中の割合は41%まで激減しました。もしこの傾向が続くとすれば、金価格は大きく下げる可能性があります。先週、じゃぶじゃぶの資金流動性と異常に低い実質金利が金投資の最大要因であると書きましたが、もし、これのいずれかの条件が変わる、つまり、資金流動性が低下したり、金利が上昇したりして、投資需要が冷え込む前に宝飾需要が持ち直さなければ、金価格は下落する可能性が高いと思われます。

  宝飾需要は人々の所得額と金価格に大きく影響されます。人々の所得が増えれば宝飾需要が増え、金価格が上がると宝飾需要は減ります。ただし、我々が見る限り、所得額の影響は金価格よりも2倍近く強いと思われます。世界の所得額が1%増えれば、金価格が2%上がったとしても、宝飾需要には目立った変化は現れません。過去10年間、金価格は世界の所得の増加のペースよりもはるかに速いスピードで上昇してきました。そのため宝飾需要は減少したと考えられます。2009年には所得額は増えるどころか減少しています。そして価格の大きな上げが重なり、宝飾需要は非常に大きな落ち込みとなったのです。しかし価格の上昇スピードが緩まれば、所得も増え、宝飾需要も伸び始めると思います。

金の供給と生産コスト

  金の鉱山生産は過去10年間一定して減少してきています。その主な理由は南アの生産が減っていることです。GFMSによれば世界の鉱山生産は2001年にそのピークを向かえ、2645トン生産しました。2008年には2409トンに減少、2009年には2572トンと戻しています。

  鉱山生産の減少は一般的に考えて強気要因ですが、金の場合はリサイクルが効く分、地上在庫の量は半端ではないものがあります。そのため、鉱山生産量が少々少なくなっても、相場に対する影響はほとんど感じられないほどです。もちろんすべての地上在庫がいつも市場に出ているというわけではありません。金を持っている人間がそれを市場に放出してもよいと考えるレベルによるということになります。

  鉱山生産は今後増加する可能性があります。現在の1200ドルという金価格はほとんどの金鉱山の生産コストを大きく上回っています。利益幅が大きい今、続々と新たな鉱山の開発、そして価格が低かったころに稼動しなくなった昔の鉱山を再開する動きが出てきています。

  金鉱山の生産コストは中小のキャッシュ・コストが850ドル近辺です。そして金はほかの商品とは違って、地上在庫が非常に大量にあるために(金は錆びないし、腐らない。一度掘ったものは基本的に永久に存在することになる)、場合によってはその価格が生産コストを下回ることが十分にありえます。しかし、長期的にはやはり生産コストは金価格の下値として底を支えると考えてよいでしょう。生産コストのインフレ要因が年間10%だとすると、2012年にはこれら中小の鉱山会社のキャッシュコストは1000ドルに達することになります。

  これらすべてをベースに、今後半年間に金価格は1300ドルに達し、2010年の金価格平均は1180ドル、2011年は1240ドル、2012年には1280ドルと予想します。(執筆者:池水雄一 提供:オーバルネクスト 編集担当:水野陽子)

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【執筆者】
池水雄一(いけみず ゆういち)

1962年兵庫県出身、1986年上智大学外国語学部英語学科卒業、住友商事株式会社入社。1990年、クレディ・スイス銀行入行。1992年、三井物産株式会社入社、貴金属チームリーダーに。2006年スタンダードバンク東京支店副支店長、2009年支店長。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界各国のブリオン(貴金属)ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)の名を知らない人はいない。


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